日本機械工具工業会

平成28年度 日本機械工具工業会賞

技術功績賞
ヘッド交換式エンドミル専用コレットの開発 オーエスジー株式会社 
永井 保  今泉 悦史  笹原 丈裕

技術の特徴

本製品開発は主に小型MC(BT30相当)で高能率荒取り加工をする際に課題となる、機械やツーリングの剛性不足による加工の不安定さの解消を目的としている。
 安定加工実現のため、ツーリング剛性向上に着目し、ゲージラインから工具先端までの長さを極限まで短くした。また、一体型ホルダで課題となるランニングコストをコレット式にすることで解消した。




多刃ダイヤフェースミルの開発 兼房株式会社
神田 保之  本田 直也

技術の特徴

自動車用に使われるアルミ部品では大型になるほど加工面積が大きく,加工時間が長くなり,加工ラインのネック工程となっている。特に,タイミングチェーンカバーやクランクケースなど合わせ面の加工には,フェースミルが用いられる。従来は替刃式か,ろう付けタイプであるが,替刃のクランプスペースやろう付けの熱影響層の干渉により,刃数に制限があった。当社独自のろう付け技術により,熱影響層の緩衝域を狭くし,従来より刃数を1.5~3倍多くすることができた。




高能率モジュラードリルDRA型の開発 京セラ株式会社
古賀 健一郎  波多野 弘和  難波 睦政

技術の特徴

低抵抗を特長とし、切りくず排出とホルダ剛性を高いレベルで両立、高能率、高精度、長寿命を実現するモジュラードリルを開発した。
・切りくず排出性重視。深穴加工でも優れた切りくず排出性能を発揮
・一方で、ドリル本体剛性も向上させ、安定加工と優れた穴精度を実現
・「MEGACOAT NANO」技術適用、長寿命実現
・ヘッドねじ止め方式を採用し、チップ交換が容易。




マルチエッジ正面フライスカッターコロミル745 サンドビック株式会社 コロマントカンパニー
桐石 大輔

技術の特徴

通常、軸方向・径方向ともネガのカッターは、両面チップが使える利点があるが、切りくず詰まり・高い動力・切削音が問題となる。特に小型・中型マシニングセンタではこれらの問題点によって、その生産性が制限される。コロミル745は切れ刃傾き角をポジに大きくとることと、シャープな切れ刃によって、つるまき状の切りくず・切れ味良い切削・静かな切削音がネガ·ネガカッターにも関わらず可能となる。低動力で加工できるため小型マシニングセンタにおいて、切込みをアップして大幅にサイクルタイムを低減できる。




高能率汎用フライスカッタ DFC型の開発 住友電工ハードメタル株式会社
小池 雄介  住野 正平  川島 基義

技術の特徴

本開発製品は、高能率加工を目的としたアプローチ角90°、両面6コーナ仕様の汎用フライスカッタであり、片面式チップ並みの切削抵抗と、両面式チップ並みの刃先強度の両立を目的として開発した。面粗さも、M級チップでありながら研磨級に迫る精度を持っている。加えてチップ側面に凹形状を設けて切れ刃と拘束面を分離することで、工具損傷によるチップの取り付け精度の悪化を防ぐ構造としている。これらにより、高能率、高精度、長寿命加工を実現している。




高硬度材加工用『ワンカットボール70』の開発 ダイジェット工業株式会社
久野 寛幸  蔵敷 佳秀  梶 章宏

技術の特徴

・本開発は主に金型業界向けに、硬さ70HRCまでの高硬度材加工において荒~仕上げまでを1本のボールエンドミルで加工することにより、高能率で低コストな加工を実現する。
・高硬度材の高能率加工用ボールエンドミルは、切削抵抗を低減するためにねじれ角を大きく、高能率化のために切刃数を多く取る必要があるが、その為に中心部分の切りくず排出が困難となり、切りくず詰まりにより高能率な加工を阻害していた。本発明は独自の中心部形により、その課題を解決したことが特徴。




耐熱合金旋削加工用材種 AH8005/8015の開発 株式会社タンガロイ
田中 茂揮  大理 伸哉

技術の特徴

近年、耐熱合金の需要は航空宇宙やエネルギー産業界を中心に増加している。AH8005/8015は耐熱合金旋削加工におけるクレータ摩耗と境界損傷の抑制に着目し、加工の高速化と長寿命化を狙って開発された。本製品は2つの新技術を採用している。
① 高Al含有AlTiN系被膜の組織制御を可能にした新開発積層技術
② 母材の高温強度を大幅に改善した新組成・組織制御技術
さらに、表面平滑化技術「Premium Tec」によって、耐溶着性と加工安定性が向上した。




鋳鉄旋削加工用材種T515の開発 株式会社タンガロイ
高橋 欣也  佐藤 博之

技術の特徴

T515は、専用の新母材及び新コーティングを採用した鋳物加工に最適な高汎用性CVD材種である。生産性向上のため、海外を中心として高速切削化が進み、従来よりも高い耐摩耗性を有する材種が求められている。一方、鋳鉄加工は取り代変動・黒皮加工等不安定な加工であり、インサートには高い耐被膜剥離性、耐チッピング性が求められる。T515は、耐摩耗性・耐剥離性・耐チッピング性を高い次元で両立させることで、幅広い加工条件で安定寿命を実現している。




倍速切削ガンドリル DeepTriDrillの開発 株式会社タンガロイ
酒井 誠  塩田 雄介  構 健太郎

技術の特徴

深穴加工で直進性が必要な場合や40Dを超える場合は、ロウ付けガンドリルが用いられるが、すくい角が付与できない(再研磨が理由)ために切削抵抗が高い、切りくずが連続するなどの理由から、極低送り(fn=0.1mm/rev未満)で使用されることが多く、高能率化が求められてきた。
本製品は低抵抗と安定した切屑排出による高送りを実現し、インサートとガイドパッドのコーナーチェンジによる経済性も兼ね備えた画期的な製品である。




 新規工具材種「BIDEMICS」の開発 日本特殊陶業株式会社
勝 祐介  小出 実  黒木 義博

技術の特徴

航空機需要の増大に伴い、航空機部品加工メーカーには生産性の向上が求められている。また、CO2削減や燃費効率を高めるため、次世代の耐熱合金の採用が検討されている。現在、航空機エンジン部品加工には、ウィスカ工具が主に使用されているが、現状のウィスカ工具では、生産性の向上、次世代耐熱合金の加工への対応が難しい状況にある。「BIDEMICS」は、ウィスカ工具では困難であった、加工能率の向上、次世代耐熱合金の加工に対応した新しい工具材種である。




チルト式2枚刃バリ取り工具の開発 富士精工株式会社
富岡 三彦  藤井 章博

技術の特徴

本製品はボルトヨークベアリング穴の口元、抜け際などにある段差部の傾斜面に発生するバリを高能率に取るためのバリ取り工具である。チルト機構式の正逆回転でバリを取ることを特徴とし、複雑な開口形状に発生するバリの完成除去を狙って開発した。機械側の動きも回転と軸方向の動きのみで使用でき、汎用化にも対応している。




ナノ微粒WC-M2C焼結体TJS01の開発 冨士ダイス株式会社
和田 光平  川上 優  北村 幸三

技術の特徴

非球面ガラスレンズ成形用金型材料として、一般的にWC-βt(WC-TiC-TaC)焼結体が使用されるが、βtがやや欠けすく、高鏡面性がやや得にくい。一方で擬WC焼結体は、WC-βt焼結体と比較して、加工性は良いが、熱膨張係数がやや小さく、金型設計を変えなければならなかった。そこで、従来のWC-βt焼結体及び擬WC焼結体より高鏡面性が得やすく、擬WC焼結体より熱膨張係数が大きいナノ微粒焼結体の開発を行った。得られたTJS01はレンズ成形用金型だけでなく超高圧発生容器としても優れた性能を示し好評である。




高能率仕上げ加工用刃先交換式異形工具シリーズ 三菱日立ツール株式会社
高橋 勇人  小林 由幸  徳山 彰

技術の特徴

・本製品は、外周切れ刃部に工具半径よりも大きなRの切れ刃を備えたバレル(樽)形状を特徴とし、金型や部品等の立壁部を高能率に加工可能な切削工具である。
・立壁の急勾配曲面を工具外周の大きなR切れ刃部により、大きな加工ピッチで加工するため、1回の加工で広い面積を加工することができ、従来のラジアス(ボール)エンドミルよりも大幅に高能率で加工可能である。また、加工ピッチが大きくなり、切削経路長が短くなることで工具寿命も向上する。




鋼旋削用CVDコーティング材種MC6015の開発 三菱マテリアル株式会社
山口 亮介  村上 晃浩

技術の特徴

合金鋼や炭素鋼など幅広い産業分野で使用される鋼の高速・高能率加工を実現するため、高い耐摩耗性と刃先安定性を兼ね備えたCVDコーティング材種MC6015を開発した。本製品は、母材表面に均一な強靭層を持たせ刃先の欠損を抑制するとともに、従来より厚いAl2O3層により、高速加工時のように刃先の発熱が顕著な場合でも摩耗進行を抑制することができ、大幅な長寿命化を達成することができる。




超硬合金加工用ダイヤモンドコートドリルUDCMXの開発 ユニオンツール株式会社
渡邉 英人  大崎 英樹

技術の特徴

本開発は、従来困難であった超硬合金の穴あけ加工を実現するものである。従来、超硬合金の穴あけ加工は放電加工やダイヤモンド(PCDや電着)工具を用いて行うのが一般的で、従来の硬脆材加工用ダイヤモンドコートドリルで超硬合金の加工を行っても工具寿命が短く実用的ではなかった。このような状況に対して、超硬合金の穴あけを低コストで、かつ、短いリードタイムで実現することを目的に開発を行った。2012年に超硬合金を直彫りできるエンドミルUDCシリーズを発売している。今回はこのUDCコートを応用し、さらに小径ドリルの形状を最適化することで超硬合金加工用ダイヤモンドコートドリルを開発した。