2025年(第11回) 日本機械工具工業会賞
技術功績大賞
| 「SCPT-Ni合金」の開発 | 日本特殊合金株式会社 |
| 技術部技術課 堤 友浩(つつみ ともひろ) | |

新規性
本開発は、超硬合金を使用する工具メーカー向けで、超硬合金に使用されるコバルトの資源リスク(資源の偏在や供給の不安定性など)を回避を狙ったものである。・本製品は、コバルトレスの超硬合金の実用化を目的として、ニッケル超硬合金の特性値および切削性能が従来コバルト超硬合金と同等になるように開発した点に特徴がある。
技術功績賞
| 溝入れ,突切り用PVD材種PR20シリーズの開発 | 京セラ株式会社 |
| 機械工具事業本部機械工具材料開発部薄膜材料開発部PVD開発課 渡邉 賢作(わたなべ けんさく) | |

新規性
・本開発は自動車、航空宇宙、製造業界向けの溝入れ、突切り加工における加工寿命および安定加工の改善を図り、生産性向上および生産現場における環境改善を狙ったものである。
・本製品は被膜の耐摩耗性, 被膜靭性, 耐酸化性, 耐熱性を向上させ、従来品に対し加工寿命を大幅に改善した製品である。
・本製品は計算科学による材料設計を取り入れ、従来とは異なる視点で耐溶着性の改善を行い、新材料設計手法を採用した先駆けとなる製品である。
| チタン合金旋削用新材種AC9115/25Tの開発 | 住友電工ハードメタル株式会社 |
| PVD開発室 田中 大勢(たなか たいせい)、柴田 彰彦(しばた あきひこ)、田林 大二(たばやし だいじ) | |

新規性
航空機および医療産業において、チタン合金は軽量かつ高強度、耐食性や生体親和性の観点から多く使用されている。一方、チタン合金の旋削加工においては、工具との化学反応による凝着や、熱伝導率の低さに起因する高い切削温度で、工具寿命が著しく低下する問題がある。一方で加工現場では、コスト低減および生産性向上の観点から、チタン合金の高能率での加工や、既存工具に対し長時間加工可能な切削工具のニーズが高まっている。そのような市場ニーズに対応するチタン旋削用新コーテッド材種AC9100Tシリーズを開発した。
| ダイヤコーティングエンドミル「AVIX型」の開発 | 住友電工ハードメタル株式会社 |
デザイン開発部 先進工具開発グループ 三角 周平(みすみ しゅうへい)、原田 岳(はらだ がく) |
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新規性
航空機市場で多く使用されるCFRPの加工では生産性の向上が求められている。特に①高能率加工条件での安定加工、②工具寿命のばらつき低減の要望が強く、これらに対応するためダイヤコーティングエンドミル「AVIX型」を開発した。AVIX型は①複合ニック形状(特許第7298817号)とすることで、高能率条件においても安定した加工が可能であり、かつ②均一膜厚ダイヤモンドコーティング(特許第7556509号)とランダム結晶成長による優れた膜密着性(特許第6733947号)により、切れ刃の全領域で安定した工具寿命が得られる。
| 高切りくず排出性BTA工具「BSG」の開発 | 株式会社タンガロイ |
| 技術本部 切削工具開発部 主任 志鎌 広也(しかま ひろや) 技術本部 切削工具開発部 亀田 修二(かめだ しゅうじ) |
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新規性
火力・原子力発電所の熱交換器に用いられるチューブシートの深穴加工では、突発的な切りくず詰まりによる工具破損が発生することがある。多数の深穴加工中における一度の工具破損は、生産効率や品質に与える影響が大きいため、安定した加工の実現が求められている。切りくず詰まりの主な原因として、深穴奥でBTAパイプ内に切りくずが滞留すること、および被削材の二層構造や焼きムラの影響によって切りくず形状が不安定であることが挙げられる。 本開発品は、最適化された流路設計によりスムーズなクーラント流れを実現することで、深穴奥での切りくずの滞留を抑制するとともに、不安定な切りくず形状に対して高い排出性を維持することを狙いとしている。
| 二軸押出機用部材「MZⅡ」の開発 | 日本タングステン株式会社 |
| 機械部品製造本部 機械製造技術部 第1製造技術グループ グループリーダー 黒木 史哉(くろぎ ふみや) 営業本部 九州支店 皆川 泰範(みながわ やすのり) 技術開発本部 要素技術開発部 真島 克弥(ましま かつや) |
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新規性
本開発は高機能プラスチック業界において利用される二軸混錬押出機向けに、その生産性の向上および製品品質の改善を狙ったものである。・本製品はその高靭性と耐摩耗性能から生産性アップおよび製品のコンタミ低減を期待されておりながら、その重量がゆえに製造装置そのものに負担が掛かるとして適用が進んでいなかった超硬合金に対し、優れた特性は維持しつつ、比重を大幅に低減することによって製造装置への適用ハードルを下げ、更に耐薬品性を改善し製品応用範囲を広げた点に特徴がある。
| EV部品加工用フォーミングラック | 株式会社 不二越 |
| 工具事業部 工具技術部 精密工具製品技術 歯切・転造設計 柴田 祥平(しばた しょうへい) 工具事業部 工具技術部 精密工具開発 三浦 翔太(みうら しょうた) |
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新規性
自動車部品の機械要素の1つであるスプラインは、安価で高能率に加工できる平ダイスを用いた転造加工で製作されることが多い。近年のEV部品用スプラインに求められる重点項目としては2つあげられ、1つは相手軸とのガタを最小にするため、ピッチ精度を向上させること、もう一つが燃費・電費改善のため部品を軽量化させることである。本製品はワークの累積ピッチ誤差を従来よりも改善でき、なおかつ軽量化のため中空化された部品も大径寸法のバラつきを抑制して加工できる商品である。
| ステンレス鋼旋削材種MC/MP71シリーズの開発 | 三菱マテリアル株式会社 |
| 開発本部 材料開発部 材料開発課 近藤 翔太(こんどう しょうた) 開発本部 材料開発部 材料開発課 駒村 優(こまむら ゆう) 開発本部 材料開発部 コーティング開発課 菅原 和(すがわら のどか) |
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新規性
本開発は、ステンレス鋼の旋削加工用材種として、インフラ、半導体、自動車などの多様な産業向けに、高能率な加工条件下で安定した長寿命を発揮する切削工具の開発を目的とした。本製品は、切削加工時の損傷要因を熱的負荷と力学的負荷に分類し、それぞれに対応したCVDおよびPVD材種を開発したものである。熱的負荷に対しては、高温安定性に優れるCVDコーティングを採用し、高温下で耐塑性変形性に優れる新規合金組織を有する超硬合金をその基材として適用したことが特徴である。力学的負荷に対しては、硬さの異なる組成物をナノ積層することで高靭性のPVDコーティングを開発したことが特徴である。
これらの材料技術を適用した3つの材種をシリーズとして提供することにより、広範囲なアプリケーションにおいて耐摩耗性と耐欠損性を実現している。
技術奨励賞
| 「押圧FSWホルダ」の開発 | 富士精工株式会社 |
| 技術部製品開発課 秋元 優二(あきもと ゆうじ)、富岡 三彦(とみおか みつひこ)、上田 伸治(うえだ しんじ) | |

新規性
・本開発はFSW(主に点接合)の導入コスト低減及び簡便化と、接合品質向上を狙ったものである。
・本製品はFSWと板材クランプという2つの機能を備えた1つのホルダであることと、一般的な工作機械へATCで取り付け可能な点に特徴がある。
